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日本人に好きな香りは何かと質問しますと、石鹸の香りという人が多くいらっしゃいます。
石鹸は清潔感や清らかさを連想させます。ですから香水の香りのする人よりも、湯上がりの石鹸の香りのする人というのを、日本人は好む傾向があるのかもしれません。
今月の特集は、私たちの生活の必需品である石鹸とその香りについてです。
・石鹸とは
石鹸(石鹸・せっけん)とは本来、動植物油脂を水酸化ナトリウムなどのアルカリで煮沸(ケン化)し、塩析した界面活性剤で、油などの汚れを洗浄するもののことをいいます。しかし、一般には身体や衣類を洗うもの全般に使用されていることが多いようです。
・石鹸の歴史
紀元前3000年
チグリス・ユーフラテス川で発祥したメソポタミア文明、首都テロのシュメール人(現イラク)が残したタブレット(粘土板)に楔形文字で石鹸の記述が記録されています。当時の石鹸は医薬品として使われ、洗濯などには灰汁(あく)が用いられていたようです。
紀元前800年
古代ローマ時代、Sapo丘の神殿で、神に捧げる生贄の羊から焼かれる際にしたたり落ちる油と木の木灰(アルカリ)が混ざり合い、石鹸が作られています。ソープとはこのSapoが語源と言われます。
紀元前27〜79
ローマの自然科学者プリニーの記述によれば、石鹸は山羊の脂肪とブナの木灰や石灰で作るものが最上とされ、食塩を加える事により硬い石鹸が得られると書かれています。当時、この石鹸はガリア人とゲルマン人が頭髪用として使っていたとされていました。
800〜900年
石鹸作りはアラビア人からスペインやイタリアに伝わり産業として確立されました。地中海の流通場所であるフランス・マルセイユ港がヨーロッパ中の一大集散地として栄えます。この頃の石鹸は動物脂を原料とする軟石鹸といわれています。
1300〜1700年
12世紀頃、マルセイユでオリーブオイルとバリラ(海藻灰・植物ソーダ)を原料とした現在に最も近い固形石けんが生まれました。一般にいうマルセイユ石鹸のことです(図1)。この頃からカリ石けん(軟石けん)からソーダ石けん(硬石けん)へと変わっていきます。13世紀にはスペインにてカスティーユ石鹸が誕生。14世紀にスペインの都市アリカンテ、カルタゴノバ、マラガ、15世紀はイタリアの都市ベニス、サポナ、17世紀にはフランスのマルセーユ、イタリアのサポナ、ジェノバがヨーロッパの一大製造地として興隆します。サポナという名所から「サボン=シャボン」という言葉が生まれたとも言われています。
1800年〜
1790年フランス人のルブランが合成ソーダ法を発表します。1814年にイギリスにてルブランソーダの製造、工業化、1808年にマルセイユで、1824年にリバプールでルブランソーダ工場が建設されます。1865年にソルベーソーダ法が、1900年初頭に電解法が発明されます。
近代になり、最初の「ブランド石鹸」は1770年、ヤードレーの「イングリッシュ・ラベンター」石鹸からといわれています。その後、1872年「カシュメイア・ブーケ」(現コルゲート社)、1879年浮石鹸の「アイボリー」(P&G社)、1885年「サンライト」(ユニリーバ社)と次々に発売されるようになります。そして1899年ビューティーソープの代表となるラックス(ユニリーバ社)、1928年キャメイ(P&G社)が世に出ます。
日本への伝来
日本では奈良・平安時代には「さいかち」(図2)と呼ばれる植物が洗浄剤として使われていたそうです。 石鹸は戦国時代末期、ポルトガルからの南蛮船によって鉄砲と共にもたらされました。高級品であった石鹸は一般庶民には渡らず、手にすることができたのは高い身分の者だけだったようです。当時の石鹸は下剤などの薬品として使われ、庶民は灰汁などで体を洗っていたといいます。
日本の石鹸
国産の石鹸は、1872年〔明治5年〕に、現在の京都大学の前身で化学技術の向上を目的として設立された
京都舎密局での製造が最初とされています。
日本最初のブランド石鹸は「五彩石鹸」というもので加藤留吉により発売されました。その後1890年(明治23年)、長瀬商会(現在の花王)が「花王石鹸」を発売しています(図3)。これは当時の輸入石鹸以上の品質で「顔」にも使える石鹸(花王の名前の由来になっているようです。)を目指したものだったとのこと。
その他にも、1893年(明治26年)小林富次郎商店(現ライオン)から「高評石鹸」「絹練石鹸」「軟石鹸」、1909年(明治42年)に共進社石鹸製造所(現牛乳石鹸共進社)から「牛乳石鹸」、1910年には丸見屋(ミツワ石鹸・現P&G)から「ミツワ石鹸」などが発売されています。
戦後は1954年(昭和29年)資生堂の「ホワイト」、1966年(昭和41年)エメロン(現ライオン)、1970年(昭和45年)花王石鹸ホワイトなど、今でも馴染みの名前の石鹸が発売されました。
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図1 マルセイユ石鹸 |
図2
さいかち
日本で古くから洗浄剤として使われた |
図3 花王の最初の自社ブランド「花王石鹸」
(桐箱入り) |
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・製法
製法には油脂鹸化法と脂肪酸中和法の2種類があります。
油脂ケン化法
牛脂、ヤシ油、オリーブ油などの天然油脂と水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてケン化して、多量の食塩を加えて塩析させて分離。NaOHは海水や食塩水の電気分解でも精製可能(塩素に注意)。原料油脂に前処理をしない古来からの製法で、釜炊きを称する石鹸はこちらによるもの。製品の質が安定しづらい代わりに、技術しだいでは個性的な成分の石鹸を作りやすい。
脂肪酸中和法
原料油脂のグリセリンと分離した脂肪酸をアルカリで中和させてつくるので、残留塩基がなくなり皮膚、粘膜にやさしい石鹸が簡単に得られます。安定した質の石鹸を大量に造りやすく、大規模メーカーの製造に使われます。なお必要ならば、除かれたグリセリンは後から添加する。ナトリウム石鹸に比べ、カリウム石鹸は溶解性が高く液体石鹸を作ることができる。しかし日本の風呂場では溶けてしまうので浴用せっけんとしてはナトリウム石鹸が適する。
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