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■黒文字レポート 片岡哲作陶展から

1月号のトピックスでもご紹介しました「片岡哲作陶展」では香りと器のコラボレーションということで、香炉や香合など香りの器ばかりでなく、はじめての試みである黒文字の釉薬を使った陶器などが話題を呼びました。
23日のトークショーでは(図1)、片岡氏の黒文字の釉薬づくりの説明(図2)や、筆者が日本における黒文字の精油の歴史や、黒文字の精油が使われた石 鹸の逸話などを話させていただきました。
また黒文字の生産地の伊豆の富戸からははるばる日吉夫妻(図3)もお越しいただき、精油製造の貴重な体験談をうかがうことができました。(ちなみにトーク ショーの日は黒文字の精油が16本も売れたとのこと。)

図1
ギャラリー観でのトークショー
(2月23日)
図2
黒文字の釉薬の説明をする片岡氏
図3
三代にわたり黒文字油の製造を行う
日吉ご夫妻


黒文字の釉薬を使用した作品は、香炉と香合でした(図4・5)。今回黒文字を使用した釉薬は、片岡氏によると
長石、籾がらの灰と黒文字の灰とを6:2:2で調合したものだそうで、黒文字灰を使用しますと全体が凛とした感じというかすっきりした風合いになるということでした。

図4
黒文字の釉薬を使用した香炉
図5
黒文字の釉薬を使用した香合


ところで、今回の企画で打ち合わせでうかがった日に、生まれたのが(図6)の「香久山(かぐやま)」という香炉の作品です。
ギャラリーでの打ち合わせにうかがったときに、ギャラリーのオーナーの奥様(佐藤操様)が唐突に飛行機での富士山の体験談をされたました。そのことがき っかけになり、かねてより私は、香炉で富士山のような山のかたちのがほしかったことをその晩片岡氏に告げますと、片岡氏は急に工房に行かれ、2〜30分で つくられたのがこの香炉原形です(図7・8)。その場で「香久山」というネーミングも決まりました。
白の釉薬で富士山の雪を表現したものには、黒文字釉も使われました。 この山から香の煙が立ち上る様が、個人的には何ともいえず好きなのです。「香久山」の頂上から香の煙が立ち上る様は、あの『竹取物語』の最後に、帝が 「かぐや姫」からもらった不死の薬を燃やしたことで煙がたなびくという「富士山=不死山」のイメージが連想されます。

また花王石鹸の創業者の、黒文字の精油を配合した当時の処方の石鹸を復元してみたのですが(図9)、黒文字が全体の5割以上配合されているにもかかわらず それほど黒文字が主張せずバランスのとれた香調になっておりました。黒文字は、釉薬としてもまた精油の場合も、共通してそれ自身を主張しないところが興味深いところでした。

          
図6
香久山香炉
図7
香久山香炉の原形
図8
香久山香炉の原形


片岡氏は京都の生まれで、大徳寺の近くでよく遊んでいたそうです。利休が切腹させられる原因となった大徳寺の山門は遊び場であったといいます。また現在で も織部などの緑釉の作品も多くつくられています。
今回の香りとの企画でも、結果として黒文字の香りになりましたが、やはり何か必然的なものがあったのかもしれません(お茶に関するつながり)。

最終日には伊豆で黒文字の精油を使ってエステをおこなっている安藤あけみさんも、ギャラリーにお越しいただきました。 黒文字の香りがいろいろなことや人をつなげてくれた不思議な企画展でした(図10)。

図9
明治35年の黒文字油の配合された
石鹸を復元したもの
図10
手前が片岡夫妻
後列左から佐藤操さん(オーナー夫人)
片岡氏の友人の石田智子さん
ギャラリー観のオーナー佐藤摩利雄氏







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