|
宇宙飛行の初期の頃には、宇宙飛行士が何の匂いも嗅げないことが想像以上にストレスになったといいます。そのなかで、お手拭きのレモンの香りが唯一の香り
であり、それはもっぱら香りを嗅ぐために用いられたのだそうです。その後は、香りのするものや、家族の匂いを感じられるものを携帯するようになったとのこと。
宇宙空間では、故郷の地球を香りで感じることが切実なことのように想像されます。
常々宇宙空間では、どのようににおいや香りを感じるのかという疑問をもっている方も多いのではないでしょうか。宇宙飛行士のにおいの感じ方のコメントがな
いかと思っておりましたが、なかなか興味深い内容のものを見つけましたので、以下にご紹介させていただきます。
それぞれの想像力で、「月のにおい」のイマジネーションツアーをお楽しみください。
尚、以下はNASAが月の土の匂いに関してリリースした記事からのものです。
月の土、それは…
手触り − 雪のように柔らかいが、溶ける気配がないのが不思議な感じ
味 − 悪くはない (アポロ16号 ジョン・ヤング飛行士の弁)
匂い − 使用済みの火薬のような匂い (アポロ17号 ジーン・サーナン飛行士の弁)
匂い … 一体、どんな匂いなのか?
アポロの飛行士は皆、月の土の匂いを嗅いでいる。勿論、月面上では直接、鼻をあてることはできないが、月面活動を終え、着陸船に戻り、宇宙服を脱いだと
き、その表面に付いていた土やダストに触れている。もちろん彼らは船内に入る際、それらを払い落としてはいるものの、完全に取り除くことはできないのだ。
彼らはヘルメットを脱いだとき、その土ぼこりの匂いや、口に入った味などを体験するというわけである。
月面の土や岩石に関して、いきいきとした報告をもたらしたのは、最後の月着陸となったアポロ17号に搭乗していたジャック・シュミット飛行士だ。彼は地質
学者であったため、土や岩石に対するアプローチが他の飛行士と異なり、皮肉にも、科学者の視点で有益な収集を行った最初にして最後の飛行士となってしまった。
「早速ニオッてきやがったぞ」
最初の月面活動を終え着陸船に戻り、ヘルメットを脱ぐやいなや、ヒューストンに第一声を放った彼。後年、「ヘルメットを脱いだとき、土ぼこりにはすぐ反応
したよ。鼻が腫れてしまったものだ。」と語っている。本当に腫れたかどうかは怪しいが、それほどまでに激烈だったということだろう。
数時間後、その匂いは静まった。「その後の船外活動の後は、さほど匂いは感じなかったよ。免疫ができていたんだろうね」と語る彼。彼は匂いに関しては特別
に敏感な男で、ヒューストンでは石油化学工場から漂う臭いに気が狂いそうになり、煙草の臭いにも気をつけねばならぬほどだった。
だが、他の飛行士達は、「そのような匂いはしなかった」と異口同音に言う。これについてシュミット氏は、こう言いながら笑う。
「他の飛行士達も、土の匂いは嗅いでいたはずだよ。だが、もしそのような匂いの症状を認めたら二度と飛べないのではないかと、パイロットとして一考したん
じゃないかな」
つまり、他の飛行士達は、「嗅覚系に異常ありとみなされるのを恐れた」と見ているのだ。身体に異常があれば、地上勤務を言い渡されかねない。学者であるシ
ュミット氏と異なり、軍パイロット出身の飛行士達にとっては注意深くならざるを得ない、かもしれない。シュミット氏は、他の飛行士が匂いについて多くを語
らない理由を、以上のように推察する。
だが、はっきり伝えた飛行士達はこう語る。アポロ16号で飛んだチャーリー・デューク飛行士は当時、「本当に強いニオイだ。火薬の味がするし…火薬のニオ
イもするよ」と無線で伝え、17号のサーナン飛行士は「キャビンのどこかで火災が起こったかのようなニオイだ」と言っている。
勿論、月の土ぼこりと火薬の成分は全く異なる。火薬は硝酸セルロース(硝化綿)やニトログリセリンが主成分であり、そのようなものは月面では見あたらな
い。
|