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  香り紀行

■香り豊かな、四万十町  

四万十川は高知県を代表する川です(図1)。また高知県にはこの四万十と名前のつく町と市があります。(ちょっと紛らわしいですが) 今回の香り紀行は、そのうちの四万十町(主に旧大正町)のリポートです。

四万十町は、平成18年3月20日、旧窪川町・大正町・十和村の3町村が合併し誕生しました。高知県下最大642平方キロメートルの町域を、日本最後の清 流:四万十川が貫流し、黒潮洗う土佐湾に臨む自然豊かな町です(図2)。
この町とのご縁は、柚子の精油にあります。旧大正町時代から柚子の精油を生産 しているエコロギー四万十の田辺憲一氏を知り、柚子の精油についてうかがって おりました。昨年よりあたらしい方法での蒸留にも取り組まれていると聞いてお りましたが、現地を訪れるのは今回が初めてです。
4月15日の昼前に高知龍馬空港に到着。空港で田辺氏と町役場産業建設課の下藤広美氏に出迎えていただきました(図3)。空港から約2時間で四万十町へ到 着。旧窪川町の道の駅「あぐり窪川」にて昼食をいただきました。予想外だったのですが、ここから四万十町の香りの探訪の開始となりました。

図1
四万十川
図2
四万十町の位置
図3
田辺憲一氏(右)と下藤広美氏(左)

・四万十町の香りその1「香り米」(図4)
窪川地区特産に「香り米」というのがありました。藩政時代「仁井田郷」と称し ていたので「仁井田」の愛称で親しまれてきたといいます。田辺氏によりますと 「この辺ではこの香り米でないと食べた気がしない。」とのこと。この道の駅の ランチのご飯にもその香り米が使用されいてました(図5)。
普通の米に対して約1割ほど香り米(一見普通のお米と形状は変わりません)を ブレンドして炊きあげるそうです。鼻を近づけますと「確かに普通のお米と違う 香りがしてきました。」私にとってその香りは「ズンダモチ」の香りを連想させ る香りでした。この香りは少しクセがあるように感じる人もあるかもしれませ ん。しかし、これにはまってしまうとこれなしではいられなくなる、そんな香りなのです。
尚、仁井田米は平成19年第9回全国米め食味分析鑑定コンクールで、特別優秀 賞を受賞。全国ブランドへの道を着実に歩み続けていてるとのこと。 また米粉のパンやロールケーキ、カステラ(図6)などもつくられております。
食料自給率40パーセントの日本では今後米が見直されてくると思われますが、 四万十町の香り米も将来大いに期待できるものと思われます。

図4
四万十町の香り米
図5
ほかほかの香り米のご飯
図6
香り米を使ったユニークな食品

・四万十町の香りその2香魚(アユ=鮎)(図7)
四万十川の名物といえばアユです。アユは別名香魚と呼ばれていますように、天 然のものはスイカやメロンにも似た良い香りがします。ミュゲ(ススラン)やマ リンノートの香りの素材となるHelionalという香料によく似ているといいます。 その独特の香りは、アユの体内の不飽和脂肪酸が酵素によって分解された時の匂 いであり、アユ体内の脂肪酸は餌飼料の影響を受けることから、育ち方によって 香りが異なることになるといいます。ようするにアユが食べる珪藻(けいそ う)、藍藻(らんそう)などによってアユの香りがつくられているのでしょう。
水質の綺麗な中流域では、夏季には鮎の密度が高いと、川原が鮎の芳香で満たさ れるほどになるといいます。
四万十川の夏の夜の風物詩に、「火振り漁」(図8・9)という昔から伝わる伝 統漁法があるそうです。
この漁法は、立網を川を横断するように幾重にも張って、最後に松明を点し、そ の明かりで驚いたアユを縦網に追い込む漁法です。
シーズンともなると四万十川のいたるところで、赤々と燃える松明がゆらゆらと 川に反射し、時折水面を叩きながらゆっくりと船が水面を行き交う姿はまさに幻 想的だそうです。 残念ながら今回は見られませんでしたが、是非見てみたいも のです。
また「鮎」をメインとした住民主体による参加型イベントも多く行われていま す。(図10)は8月下旬に四万十川河原にて行われる「アユ祭り」の模様ですが、たくさんのアユが焼かれている風景は写真からでも、香ばしいアユの香りが届いてきそうですね。

図7
アユ
図8
火振り漁の風景
図9
火振り漁の風景
図10
四万十ならではのアユを焼く壮観な風景
(株)無手無冠HPより転載

・四万十町の香りその3ヒノキ
意外といっては四万十町の方に失礼ですが、ここは昔からヒノキの産地として名 を馳せてきたところでした。
四万十川流域は、温暖多湿なところでこの気象条件が流域の豊かな森林を育み、 長宗我部の時代から木材の産地となり、土佐藩時代には藩有林として大正中津川 集落の住民はその管理・伐採・搬出を行っていたといいます。藩政時代から続け られた木材の伐採・搬出は明治以降も盛んに行われました。
今でも流域で産出されるヒノキは「四万十桧」のブランドで販売されており、全 国有数の良材の産地という価値のある存在になっています。ちなみに国立劇場の 舞台のヒノキ(ヒノキ舞台とはよくいったものです。)はここ四万十産とのこ と。大正町の郷土資料館に行きますと、林業に携わった人々の遺品が展示されて いました。
(図11)のように町のいたる所に製材所が見受けられて、ヒノキの芳香があた りに漂っています。

図11
ヒノキ材

・四万十町番外編 沈下橋(ちんかばし)(図12・13)
最後に香りにはかかわりないのですが、沈下橋(ちんかばし)をご紹介します。
高知県は台風銀座。四万十川もまた暴れ川と呼ばれ、昔から台風時には生活、交 流の橋がつぎつぎと流されるという惨事が続きました。その生活の知恵から生ま れたのが沈下橋です。
橋げたを低くし、水が増すと川の中に沈み抵抗を弱める構造ですが、流れが収ま るまで忍耐の橋です。橋の発達に伴い、だんだん数が少なくなりましたが、四万 十川には無くてはならない風物です。
下藤広美氏はわざわざ車も通れる沈下橋を渡ってくれました。 両側に欄干がないので、川に落ちたりする危険もあるのですが、とてもエコロジ カルな発想の橋で、自然の景観にもよく溶け込んでいて四万十ならではの景観の ひとつです。

図12
上岡沈下橋 今回案内していただいた
下藤氏お気に入りの橋
図13
フェスティバルの日、沈下橋を渡る人々
(株)無手無冠HPより転載

・四万十町プロフィール
四万十町は、平成18年3月20日に高知県の窪川町、大正町、十和村の2町1村が 合併して誕生した新町です。
位置は、東から西に流れる四万十川の中流域にあり、東南部は土佐湾に面して います。町域は東西43.7km、南北26.5km、総面積642.06km2であり、そのうち林野が87.1%を占め、田畑は4.8%を占めるに過ぎません。集落の多くは四万十川と その支流の河川沿いや台地上にあり、一部は土佐湾に面する海岸部にあります。
四万十町東部(旧窪川町)は、中央部を南流する四万十流域の標高230mの高南 台地に位置し、約2,000haの農地が広がっております。
四万十町中部(旧大正町)は、幡多郡の北部「北幡地域」に位置し、平野は四 万十川、梼原川沿いにわずかに見られるが、そのほとんどを山林が占めています。
四万十町西部(旧十和村)は、村の中心部を東から西に四万十川が蛇行して流 れ、流域沿いに農地が点在しているが、総面積の約9割を山林が占めています。

四万十町の人口
男:9662人
女:10823人
計:20485人 世帯数:8796世帯

さて次回はいよいよメインの柚子の精油などについてのリポートです。


「火振り漁」の問合せ先
四万十川上流淡水漁業協同組合
0880-22-1673


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